取引恋愛





そうして過ごしていると、あっという間に時間が過ぎていった。




今日は卒業式当日。

…そして明日地元から離れる。
遊佐への想いと共に旅立つ日だ。



「卒業生入場。
皆様、拍手でお出迎えください。」




アナウンスと共に式場へ入っていく。
盛大な拍手の中、もう既に泣きそうな子がたくさんいる。



クラスごとに入場し、着席していった。
それが終わり、ついに卒業式が始まった。




「…卒業証書授与。
1組、浅野智子。」




「はい。」




1組から順番に名前を呼ばれ、壇上に上がる。
それをひたすら見ていると順番がきた。



「影橋妃奈。」



「はい。」




練習通り壇上に上がり、卒業証書を受け取る。
そしてお辞儀をしてから壇上をおりた。



…あぁ、本当に卒業なんだな。
そう改めて実感する。
そして今日、ここを離れるんだ…そう考えると少し涙が出てきた。




そんなこと考えている間に次々と名前が呼ばれている。
それと同時に鼻をすする音も増えていった。




「2組、生田春樹」



「はい。」




1組が終わり、次は2組へとうつった。



「楠木遊佐。」



次々と名前が呼ばれている中、遊佐の名前だけは妙に響いて聞こえてきた。

あぁ、私重症だな。



ゆっくりと壇上に上がっていく遊佐。
その姿さえもかっこいい。

…これが最後。
もう会うことも難しくなる。
と言うより、もう接点がなくなる。


目に焼き付けるように遊佐を見つめ続けた。