移動教室のため、廊下を歩いていると前から遊佐が歩いてきた。
スルーしようかと思ったけど遊佐が私の目の前にたったせいで、そうするわけにもいかなくなった。
「…どうかしたの?」
「遠くに行くって噂で聞いてよ…本当なのか?」
「本当だよ。
ここを離れて寮に入るの。
それでいつか、世界中の人達に私の演技を見てもらえるように…頑張ろうって思ってる。」
「…そうか。」
シーン…となり、その場にいるのが気まずくなる。
「あ…そ、それじゃぁ次の授業あるから……。」
返事を聞かず逃げるようにしてその場を去った。
久しぶりの遊佐との会話に胸のドキドキが収まる気配がない…。
あぁ、私やっぱり遊佐のこと大好きだ…。
改めてそう思った。
それから進展なんてなく、目を合わさず学校生活を送った。
遊佐と接点を作ると、自分の報われないこの想いが募っていくばかり…。
叶わない恋ほど辛いものはない、と今なら思う。
一方的な愛情ほど、虚しいものはない…。
少しでもその想いが薄れていくことを願いながら、遊佐をなるべく意識しないように過ごす。
それが今の私にできる最大限のこと。
好きな人の恋を応援するのが
好きな人の幸せを祈るのが
本当の愛だと思うから。
直接は言えないけど…
「…どうか幸せに。」