観客席では大きな拍手が響きわたっていた。
やりきったことに部員全員が満足している。
改善すべきところは多々あるかもしれないが、今はこの空気を楽しまないとね!
今回私が演じた実華は関係を崩したくない一心で気持ちを伝えなかった。
…この気持ちはすごくわかった。
私も遊佐と今のこの関係を崩したくない…同じだと思った。
演技もあるけど私の想いも込めた。
しかし私と実華と違うところはもちろんある。
実華は溢れてくる想いに耐えきれず、言葉にして真に伝えた。
私は…当然伝える勇気などない。
言葉にしたらこの関係が終わってしまう…自分から壊したくはない。
好きな人に離れられるのがわかってて気持ちを伝えるなんて、私には無理だ。
…このままの関係でいくしかないんだ。
「エース様、お疲れ様です。」
「武久君…エース様ってやめてよね!!
…お互いお疲れ様だね。」
「怒んなよー。
すっげぇ楽しくできてよかったわ。」
「私も楽しかったよ。」
「今までで一番いいのが出来たな!!
まぁでも大会では今以上のやつが出来るように頑張ろうな。」
「そだね!!
って言っても明日もやるんだよ?」
「あ…忘れてたわ。
やりきった感半端なくてつい!」
「もー、しっかりしてよ!!
って私着替えて早く行かないと!!
遊佐が待ってるんだった。」
「おーおー、相変わらずらぶらぶですこと。
…さっさと行ってこーい。」
「んじゃまたねー!!」
体育館の入口で待っててくれてるんだよね…急がないと!!
私は急いで舞台の衣装を脱ぎ、制服に着替えて入口へ向かった。


