人気のない校舎裏まで行き、真は人がいないことを確認してからやっと止まった。
実華はいきなりのことでよく分かっていない。
寝てる時に急に引っ張られたのだからそうなるのも無理はないだろう。
「あの…真?
とりあえず靴履き替えてないんだけど…」
「靴なんてどうでもいい。」
「いやいや、外では外靴を履くなんて当たり前でしょうが。
…ってかこんなところまで連れてきて何なの?」
すると急に真は実華を抱きしめた。
もちろん展開についていけず、訳がわかっていない。
とりあえず真の腕の中から出ようと思い、実華は抵抗した。
「ち、ちょっと…っ!!
離してよ!!」
「俺!!…気づいたんだ。」
しかし、いつもと違う真の様子にぴたっと体が止まった。
「実華に避けられて、告られて…やっと気づいたんだ。
今までは幼なじみとして近い距離だったし、そばにいて当たり前ってなってたけど……違うんだなって…。
お前がいなくて落ち着かないし、他の奴と喋ってたりするといらいらするし……なんで俺の事は避けるのにって何度も思った。」
「それはっ…真の事を幼なじみとして見れなかったから……。」
「それは分かってた。
分かってたけど…もやもやしてた。
こんなこと言ったら失礼だけど、和佳奈ちゃんと遊びに行っても本当に楽しいって思えなかった。
…お前と遊んでた日のことばっかり思い出してさ、
あの時楽しかったな
あの時これで笑ったな
とか、実華とのことばっかり思い出すんだよ。
…俺、実華の事が好きだ。
俺は実華に…そばにいて欲しい。」
実華の目には涙が溢れていた。
信じられない、ただそれだけが頭の中をぐるぐるとまわっている。
でも、
体に感じるこの体温
耳元で聞こえる真の声
そしてなにより…体に伝わってくる心臓の音
その全てが現実であることを示していた。
実華はそっと真の背中に腕をまわし、ぎゅっと抱きついた。
「好き…ずっと好きだったの……。
ありがとう。」
「いっぱい傷つけてごめんな。
俺も好きだ。」
近すぎるゆえに気づかない恋心…
あなたは違いますか?
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最後のナレーションが終えてカーテンが降り、無事舞台を終えた。


