でも正直、今はそのことについて悩んでいる時間がない。
自分の演技を見せる舞台がもう間近なのだから……。
「…今は演技に集中したいの。」
『それはわかってるよ。
でも集中できない原因はあの人でしょ?』
「そう…だけど、それだけじゃない。
私が自分の役の気持ちになりきれてないんだよ。
その上、集中できない原因が増えたからこうなってるんだ…。」
『劇の内容は聞いてないけどさ、それって自分のはかけ離れてる感じなの?』
「…どういう意味?」
『んー…例えばだよ?
異性にモテモテの役とかだったら、妃奈にも気持ちがわかるでしょ?
告白ばっかりうっとうしい!みたいな』
「…まぁそんなモテモテって程でもないけど、うっとうしいっていうのはわからなくもないや。」
『まぁ全く役と一緒っていう経験はないにしても、似たような事があれば重ねてみるのも一つじゃない?』
「ありがとう。
もう一回考えてみるね。」
『また何かあったら連絡ちょうだいね。
それじゃぁばいばーい』
美紀との電話が終わり、自分と役が重なっているか考えてみた。
しばらくして眠気が襲ってきたため、寝ることにした。