取引恋愛




アドバイスを貰った後、意識しながら練習をした。
それでも上手くいかない。

気持ちは込めてる。
ただ役になりきれてないから伝わらないのだ。



この役はどんな子か、どんな性格か、そんなこと考えながらしてもやはり変わらない。
ただただ焦りが募っていく。



そんな私の様子がわかったのか、早めに部活が終わった。




家に帰っても食欲が出ず、とりあえずお風呂に入りベッドに寝転んだ。
ぼーっとしていると美紀から電話がかかってきた。



「もしもーし。」



『もしもしー。
今日どうだったのか気になってさ。』



いつも本番前のチェックの後に電話をくれる美紀。
私を元気づけるためにいつもしてくれる。



「…役になりきれてないって。」



『それはよっぽどだね。
何かあったの?
集中出来ないわけとか?』



集中出来ないわけ…



「遊佐の事…かな。
私の役作りにも問題はあるんだけど…どうしても頭から遊佐の事が離れないの。」



『あー…あの事ね。
事情は聞いたの?』



「聞けないよ…」





変に関わって切り捨てられるのが怖いから…。