取引恋愛




放課後になり、一連の流れを通している。
余計な事を考えてる余裕はない。
遊佐の事は忘れて、今この一つ一つの演技に集中しなければならない。

頭から無理矢理あの時のことを消去しながら、役になりきった。


しかし…




「影橋さん、体調悪いの?」



演技後の先生の第一声がそれだった。



「いえ、そんなことないです。」



「役になりきれてない部分がちらほらある。特に告白のシーンは気持ちが伝わってこない。」



「っ…すいません。
練習します。」



今回の劇は恋愛系だ。
その為もちろん告白のシーンもあり、そこが一番の見せ場でもある。

その部分の気持ちが伝わらないなんて…。
後少しで本番なのに私は何をやっているんだろう……。



「本番まで後少ししか時間がないけど、役の気持ちをもう一度振り返ってみたらどう?
落ち着いてやれば影橋さんは出来る。」



「…ありがとうございます。」



「米澤君も、もう少し告白のシーンで強めに出て。
お互いが思いきり打ち明けるような感じで。」


「わかりました!」



「次は…………」



アドバイスを聞きながらも、自分の出来て無さに焦りを感じていた。

どうしてだろう…
どうして役になりきれてないのだろう…


一体どうすればいいのだろう……。