取引恋愛




放課後になり、部活へ行こうと荷物をまとめて廊下に出ると声をかけられた。

誰だろうと振り向くと同じ部活で今回の演劇の相手役である米澤武久(こめざわたけひさ)だった。



「武久君、どうしたの?」



「今から部活行くんだろ?
一緒に行こうぜ。」



「いいよ。」



「んじゃ行こーぜ!
文化祭まで後3週間くらいだな。」



「後少しだなー…
大体は出来上がってるし、時間的には余裕はあるよね。」



「そうだな。
あーやべ、緊張するわー。
俺こんな大役初めてだしよ。」



「でも武久君演技上手いし心配することないよ!
それに何かあっても舞台の上では一人じゃないから、リラックスリラックス!

あ…一人になるときもあるね。」



「ははっ!…さんきゅ。
我部のエース様がいると心強いわ。」



「もー!!
エース様とか言わないでよ!!」



「わりーわりー!」



二人で談笑しながら部室へ向かった。
武久君との話で盛り上がっていて、私は周囲を見ていなかった。




だからじっと私達を見ている遊佐に気づかなかった。