ドアの音がした途端腰が抜けて床に尻餅つく。
あの女の目つき…
「怖かった」
悠稀は何も言わずあたしの手首を放してあたしの頭を撫でる。
「悠稀…」
「ん?」
「嘘はダメだよ。あたしは悠稀の彼女でも爽翔の彼女でもないんだから」
なんも答えず、ただただあたしの頭を優しく撫でる。
「あたし…なんかもうわかんないよ」
涙を必死に堪える。
好きとは何か。
彼氏とは何か。
あたしより菜々さんか。
なら、簡単に好きって言わないでよ。
彼女とか簡単に言わないでよ。
いろんな気持ちが入り混ざって涙が流れた。
「これ以上俺らに近づかない方がいい。特に爽翔にだ」
「うん」
悠稀の声はどこか優しくて、
どこか切なくて胸が痛む。
「あの女は絶対に関わるな。外で偶然会ったとしても知らないふりをしろ。わかった?」
「うん」
「あと、ごめん。」
「悠稀は謝ることないよ」
気づいたら悠稀の頭を撫でていた。悠稀柔らかい髪の毛に触れていた。
「その手首」
悠稀の頭を撫でていたあたしの手を手に取る悠稀。
自分の手首を見ると赤い跡があった。
きっと悠稀があたしの手首を強く握ったからだ。
「あー、こんなん少し経てばすぐ治るから大丈夫だよ」
あたしの手首を心配そうに見て優しく撫でる悠稀。
「起きれそう?」
「起きれる」
そう言ったものの立とうとしたら足の震えでうまく立てなかった。

