「ねえ…、なんでここにいるの?」
「なんでって、なんで?」
「だって…、」
あたしもベットの上に腰掛けると、ギシリと体重の分だけ沈む。
言葉の端を濁しながら、何気なく窓の方へ視線を移した。
開けっ放しの窓からは真夏のヌルくて気持ち悪い風が入り込んできていて、シンプルな無地のカーテンが揺れる。
その向こうにある雲一つない青空が眩しくて目を閉じると、二ヶ月前のことが頭によぎった。
鳴り響く、電話を取った、あの時のこと。
ゆっくりと目を開けて、ハルを見る。
相変わらず何を考えてるかわからない、穏やかで優しくてズルい笑顔。
きっとあたしが今から何を言うか、見抜いてる。
なるべくハッキリと、声を出した。
「だってハルは、死んだはずじゃない。」
そう、今ここにいる彼、三浦ハルは。
二ヶ月前に事故でこの世を去ったはずだった。

