――そのひとは寂しい目をしていた。
遊郭の奥。
そこへ行くのは、気に入られたひとだけだ。
溜息混じりの声と共にやって来た男を大和之姫という源氏名の女性は見遣った。
(なんとまぁ。)
女慣れしてなさそうなひと。
どうせ、興味本位で遊郭にやって来たに違いない。
そんなウブな男に興味はない。
「くだらない。」
吐き捨てて、窓の外を見た。
遊郭の奥で寵愛され、偽りの愛を振りまく。
自分は何と浅はかで、愚かなのだろう。
話を聞けば、八倉家のひとだとか。
そんなこと、どうでもいい。
もし、此方へ来ると言うのならば門前払いしてやろうという気持ちだった。
少し過ぎった想像は現実となったようで、その男は部屋の前へ来た。
(その、ウブな面を一瞥してからでもいいか。)
口角を釣り上げて思う。
三つ指をつき、歓迎の言葉を並べる。
心にもない、社交辞令だ。
何を言ったかも覚えてない。
その男を案内した人物が立ち去ったのを確認すると、男を見上げた。
金糸の髪に黒い瞳。
その目を見て、寂しい人だと思った。
理由はわからない。
ただ、その孤独をひどく“愛おしい”と思った。
一目惚れとはこのことかもしれない。
心から愛したいと思った。
遊郭の奥。
そこへ行くのは、気に入られたひとだけだ。
溜息混じりの声と共にやって来た男を大和之姫という源氏名の女性は見遣った。
(なんとまぁ。)
女慣れしてなさそうなひと。
どうせ、興味本位で遊郭にやって来たに違いない。
そんなウブな男に興味はない。
「くだらない。」
吐き捨てて、窓の外を見た。
遊郭の奥で寵愛され、偽りの愛を振りまく。
自分は何と浅はかで、愚かなのだろう。
話を聞けば、八倉家のひとだとか。
そんなこと、どうでもいい。
もし、此方へ来ると言うのならば門前払いしてやろうという気持ちだった。
少し過ぎった想像は現実となったようで、その男は部屋の前へ来た。
(その、ウブな面を一瞥してからでもいいか。)
口角を釣り上げて思う。
三つ指をつき、歓迎の言葉を並べる。
心にもない、社交辞令だ。
何を言ったかも覚えてない。
その男を案内した人物が立ち去ったのを確認すると、男を見上げた。
金糸の髪に黒い瞳。
その目を見て、寂しい人だと思った。
理由はわからない。
ただ、その孤独をひどく“愛おしい”と思った。
一目惚れとはこのことかもしれない。
心から愛したいと思った。

