散華の麗人

その笑みのまま、風麗は本を一冊取る。
「………風土、歴史、学問、地理……こっちは、昔話?」
「順番動かすなよ。一応、並べてるんやから。」
「これで、並んでるのですか?」
ずらりと並んだ本を眺める。
ジャンルも大きさも厚みもバラバラな本達。
一見、無造作に並んでいるだけだ。
風麗は眉間に皺を寄せて何順か考え込んだ。
「……これ、何順です?」
やがて、考えるのをやめて尋ねる。
「アイウエオ順や。」
即答する一正に風麗は再び、本を見る。
タイトルはアイウエオ順とは全く関係ない。
作者も、バラバラな順番だ。
「あの、バラバラですが。」
「んなわけあるかいな。」
呆れたような声が返ってきた。
(呆れたいのはこっちだ。)
そう思いながら書類をする背を見る。
「……あいうえお、ですよね。」
「せや。」
そう言いながら、一正は次々と書類を終わらせる。
「本を開けば分かるぞ。」
「は?」
風麗は困った表情になった。
開いてみると普通の書面だ。
何の変哲もない。
「あ。」
全部とはいかないが、何冊か見て、理解した。
(…………これは。)
「文頭、ですか。」
「まぁな。」
当然の様な返事。
(やっぱり、変人だ。)
改めて、確信した。