散華の麗人

文面を見ると、民からのものらしい。
普通、相手にしないだろう内容だ。
「これは、わしの仕事。この戦で何があるかわからん。だから、できるだけ終わらせなければならない。」
そう言いながら筆を執る。
「……わしには後継がおらん。もし、後を継ぐなら、ジジィ側の奴らや。」
そう言うと、書類と本を交互に見て筆を走らせた。
「民より王国。それならば、この書類は取るに足らないと蔑ろにされる。」
真剣に書類と向き合って言う。
風麗は困った表情をした。
「しかし、陛下が倒れては元も子もないでしょう。」
「だーかーら!大丈夫やて言ってるやろ。」
一正が眉を寄せる。
「大体、何で死ぬ前提で話すんですか。いつものポジティブはどこいったんです?」
「例え話や。」
「『わしはいいことしか考えない。悪いことは他の奴が考えるやろ。』って言ったのはどこの誰ですかね?」
「……あそこに居なかったのに、なんで知ってるんや。」
「伊達に傭兵やってるわけじゃないんですよ?情報網を甘く見ないでください。」
風麗は清々しい笑みを浮かべた。