八雲は冗談か本気かわからないような笑みを浮かべている。
「睦は」
紀愁は困った表情をしているようだ。
「?」
その様子に三人は不思議そうにする。
「睦は幼い頃から戦うことを強要される環境で育ち、後継ぎがいなかった為に男として育てられたのです。しかし、後継ぎができてしまい、睦が邪魔になった。今更、女として育てるにも手遅れだろうということで、捨てられたのです。」
紀愁は悲しそうに言った。
「本人は知っているのか?」
「一応は」
風麗に紀愁は答える。
「嫁のもらい手は?」
「さぁ?本人に結婚する願望があるかもわかりませんし……」
紀愁は苦笑した。
「何はともあれ、本人なりに上手くやっているようですよ。」
「そうか。なら、よかった。」
「お人好しですね。」
紀愁は風麗に笑った。
「そんなんじゃありません!」
風麗はムキになった口調をする。
「貴方達といると、病も消えてしまいそうです。」
「それはよかった。ふふっ」
安堵したような表情で風麗が笑いながら言うと辺りは笑いに包まれた。
(このまま、ずっと笑っていたい)
風麗は心から思った。