にこにこと笑うとその男は景之を見た。
「良寧様がお見えです。」
「良寧が?」
景之はじっと家臣を見る。
「もうじき客間へお通しします。」
「客間なんかじゃなくていいわ。」
そう言ったのは真後ろの女だ。
家臣は驚いて振り返る。
「ゆーきちゃ~ん!!」
驚く家臣を女と思えない剛力で吹き飛ばすと景之に飛びかかる。
即座に景之は横に避ける。
それを読んでいた女は着物の袖を振り上げ、くるりと優雅に回る。
景之の背後に回ると今度こそ抱きつこうというように両手を広げるが、景之は身を屈める。
そして、足払いをする。
女は足払いしようという足をぱしりと受け止める。
やはり女と思えない剛力で景之を上空へ投げる。
いとも容易く投げられた景之の姿に家臣と辻丸は呆然としているが、景之は身を捻って体勢を立て直した。
「そう来なくっちゃねぇ!」
女はにこにこと余裕そうな表情で景之の腹部目掛けて拳を振る。
それを受け止めた景之だったが、それが罠だったと気づいた時は遅かった。