成田城側と八倉側の侍医が丁度居た。
成田側の方は若いが、八倉側の方は60を過ぎたような風貌だ。
「人間の助力など要らぬと言っている。」
頑なな景之に八倉側の侍医が“やれやれ”という顔をした。
「当主殿。某の余計なお節介を受け取ってくだせぇ。」
そう言うと傷口を診た。
既に塞がりかかっているが、左足に石が刺さったままだ。
「少し辛抱してくだせぇな。」
そう言うと、傷口を消毒し、石を抜いた。
小さく悲鳴をあげそうになっていたものの無感動な目のままでいる景之に、辻丸は今まであったような嫌悪は感じなかった。
どこか、弟のような雰囲気にさえ感じたのは身長や見た目のせいだろうか。
“人間風情が”と言う言葉さえ微笑ましい。
「おい。何だその視線は。」
景之はそれを悟って不服そうな声を上げた。
「いいや。手の掛かるじいさんだと思っただけだ。」
「貴様」
「はいはい。立場は弁えていますよーだ。」
「……」
辻丸に不服そうに睨むがそれ以上は何も言わずに、興味が失せたようにそっぽを向いただけだった。
「人間風情が。」
そう吐き捨てる。