散華の麗人

辻丸という国王は自分が生き延びるということよりも、理想の国への想いを選んだのだと2人は理解した。
此処で斬られようとも構わないのだろう。
「わしは、支配する気はない。ただ」
そこで、真っ直ぐに辻丸を見据える。
「わしが創る国に協力しろ。」
その視線に辻丸は快くないように眉を寄せる。
「あんたはおれの家族を奪った。」
「そうや。」
国を“家族”と称していることを察して、一正は頷く。
「あんたも、わしの家族を奪った。掛け替えのない妻を奪った。」
静かに言うと、辻丸を見据えた。
「悲しいことやが、それが戦や。そして、この戦を無駄にせずに世界を変える為の糧にする。皆が笑える国。わしの、望む世界のな。……それが、死んでしもうた奴らへの唯一の償いやと思っとる。」
「皆が笑える国。」
辻丸はその言葉を反芻する。