散華の麗人

部屋へ案内されるまでお互いに一言も話さなかった。
「あの。」
「何だ?」
茶々が沈黙を破ると時雨は眉を寄せた。
「この部屋は」
「私の自室だ。監視も含めて、共に過ごす。」
「だから、敵ではないですって!」
「ここでは誰を信じるにも何処かで疑わねばならぬ。」
(……陸羽派か。)
時雨の言葉に茶々は困った顔でいる。
「それに、貴様に左腕の座を譲るつもりはない。次にその座を奪うのはこの私だ。」
「!?」
茶々は思わぬ言葉に瞬きをした。
「私は別に狙ってなど」
「黙れ!」
時雨は威嚇する。
「奴もそう言っていた。己は無欲だと、そんなつもりはないと。……だが、現に奴は左腕の座に居る。分かったら黙って従属しろ。」
その目は信用していないことを主張している。