気配の主は雅之に近づく様子はない。
「アラ、随分ト弱ソウネ。」
片言で話す声はひらりと与吉郎の方に降りる。
(此方には気付いてないな。)
雅之はその姿を見た。
クスクスと嗤う女は黒髪に青い目をしている。
「貴方は……竜華国の傭兵、でござったな。」
与吉郎が言う。
(竜華国?書物では、違っていたはずだ。)
偽造を疑い、其方を睨むように見た。
「個人情報ヲ、コンナ場所デ言ウナンテ。ヤッパリ、馬鹿ネ。」
「埜々。」
嗜めるように柚木が言うと、その女は笑いながら部屋の中へ案内した。