散華の麗人

暫く、年齢の話をしながら駆けていた。
「あぁー!わしはな、好きでこんなんやないんや。何故わからんのや!」
「年齢詐欺師なそちを羨むわらわの気持ちも汲んで下さりませ。」
つんっと澄まし顔で千代が言う。
年齢よりかなり若く見える当事者にとってはちっとも嬉しくない。
「……謁見の度に、“国王陛下はいらっしゃるか?”とか訊かれるこっちの身にもなれ!わし、よりによっても小姓に間違われるんやぞ!?」
「謁見の度に、“しっかりした女性ですねー、陛下も将来こうならないと”とか笑い話される身にもなって下さりませ。わらわ、年上だと思われているのですよ?もうじき五十路の陛下よりも!」
口喧嘩に発展してしまった軽口を誰もとめることはなかった。