一正は部屋で1人になった。
そして、ふぅっと息を吐く。
「これで、隠れる必要はないやろ。なぁ?」
そう言いながら笑うと、人影が現れた。
姿は黒い影で包まれていて分からない。
(奇術師か。まさか……)
確証がないので、考えるのをやめた。
「よくわかりましたね。」
人影は中性的な声音をしていた。
「わしは国王やで。当然や。」
笑いながら人影を見る。
「国王……ねぇ。」
どこか馬鹿にしているような口調でその言葉を反芻する。
窓から月光が人影を照らす。
影が払われ、姿が見えた。
「よくもまぁ、笑っていられるものだ。」
人影は狐の仮面を被り、黒い布を頭から羽織っていた。
「目的は何や?わしの命か?それとも戦の情報か?」
一正は人影を睨んだ。
「何れにせよ、ただでは済まなさそうですね。」
全く感情がこもっていない冷たい声音で応える。
「情報はヤバいな。」
「自分の命よりも情報優先、か。……国王気取りで、いかにも周囲のことを考えているような口振り。」
穏やかにそう評した。
「貴方は重症な偽善者ですね。」
人影は吐き捨てるように言った。
「そんな貴方を見ていると、虫酸が走ります。」
「勝手に走れや。わしは偽善のつもりやない。」
「なら、何でしょうね。」
真っ直ぐ、人影を見据える一正に人影は淡々と言う。