散華の麗人

少しして、与吉郎が薬湯を持って来た。
「ジジィも年やな。」
「五月蝿いわ。バカモノ。」
陸羽がそう答えると、一正はそれ以上はからかわなかった。
(陛下も陛下なりに気を遣っているのか。)
風麗はそう思いながら、見ていた。
陸羽は黙って薬湯を飲み干す。
「どこか悪いの?」
傍にいた与吉郎に風麗は訊ねる。
「陸羽様は足が悪いのじゃ。」
「その割りにはお元気ですね。」
「まぁ、後は健康そのものじゃからな。」
「へぇ……」
小声で答える与吉郎に風麗は納得した。
(内臓がやられてないのが不思議だ。)
既に、瓶3本以上飲んでいる陸羽を見ながら、風麗は思った。

しばらくすると、酔いが回ってきたのか、一正は寝た。
「バカモノが。お前が寝てどうする。」
陸羽はそう言うと、一正を杖で叩いた。
「いてっ!!……むぅ。」
一正は起きたが、眠りそうだ。
「リアン。」
「何です?」
眠りそうな目でリアンを睨むように見た。
「あんたは何の為にこの城へ来た?」
「それは、同盟の為に」
「嘘はバレるぞ。」
一正はリアンを見据えて、言葉を遮った。
「!」
リアンは驚いた表情で一正を見る。
「あんたは、かなり腕が立つ軍師や。公務に忙しいはず。同盟だけの為なら、あんたやなくて、下の奴でもええやろ?」
「それは、僕がたまたまここを通っただけで」
「都合よく、このタイミングでか?」
その問いかけにリアンは答えられない。