〝……どうにも気持ちのいい、あっけらかんとした女だったな〟
ユアファは亡霊王だと言ったウィンレオに臆することもなく、けらけら笑っていた。強い魔力も感じた。大きな器の人間だった。
「…………」
ふと、机の上に置いてあった新聞が目に付いた。
考えてみれば三十五年以上振りの現界である。現在の状況も興味深かった。そうやって、他の事を考えていなければ、自分の思考に押しつぶされてしまいそうだった。新聞に手を伸ばし、読む。
すると、誰かが家の扉を開けようとする気配を感じた。ユアファだと思い、ウィンレオはそのまま新聞に目を通していたが、その気配は扉を開けることができなかったらしく、術を使って部屋の中に入ってきた。
「っ?」
「こんなところにいたのか、ゼロアス」
見れば、見知った男の顔があった。白濁した緑の瞳が真直ぐ自分を見つめている。
「……セレコス、誰から聞いた?」
「誰からもクソもあるか! 何やってるんだ! こんなところで! アルモが血相を変えて俺のところに来た。王宮も上を下への大騒ぎだ。ほら、帰るぞ」
だが、男の言葉に、ウィンレオは首を縦に振らなかった。男はため息をつくと、哀しげな面持ちで、
「なぁゼロアス、オークがああなったのは俺もショックだ。はっきり言ってあいつが死んだなんて、俺も信じられない。お前が受けた衝撃は凄まじいだろう。だがな、お前は王なんだ。亡霊王なんだよ。そのお前がこんなところでうじうじしててなんになる。な、帰るぞ」
「その人、今はそっとしてやってくれないかな」
いつの間にか、ユアファが哀しげな微笑を浮かべて立っていた。男は驚いてユアファを見た。
「ここはあんたの家か」
「ええ」
そして、男はウィンレオを見た。憔悴しきっている。ユアファはそっと口を挟んだ。
「この人に何があったのか、あたしは知らない。ただ、大切な人を亡くしたって聞いた。あたしが思うに、亡霊王なんかやっちゃってる分には、この人こんなにヘタレ君じゃあないんでしょ?」
男は目を丸くした。
ユアファは亡霊王だと言ったウィンレオに臆することもなく、けらけら笑っていた。強い魔力も感じた。大きな器の人間だった。
「…………」
ふと、机の上に置いてあった新聞が目に付いた。
考えてみれば三十五年以上振りの現界である。現在の状況も興味深かった。そうやって、他の事を考えていなければ、自分の思考に押しつぶされてしまいそうだった。新聞に手を伸ばし、読む。
すると、誰かが家の扉を開けようとする気配を感じた。ユアファだと思い、ウィンレオはそのまま新聞に目を通していたが、その気配は扉を開けることができなかったらしく、術を使って部屋の中に入ってきた。
「っ?」
「こんなところにいたのか、ゼロアス」
見れば、見知った男の顔があった。白濁した緑の瞳が真直ぐ自分を見つめている。
「……セレコス、誰から聞いた?」
「誰からもクソもあるか! 何やってるんだ! こんなところで! アルモが血相を変えて俺のところに来た。王宮も上を下への大騒ぎだ。ほら、帰るぞ」
だが、男の言葉に、ウィンレオは首を縦に振らなかった。男はため息をつくと、哀しげな面持ちで、
「なぁゼロアス、オークがああなったのは俺もショックだ。はっきり言ってあいつが死んだなんて、俺も信じられない。お前が受けた衝撃は凄まじいだろう。だがな、お前は王なんだ。亡霊王なんだよ。そのお前がこんなところでうじうじしててなんになる。な、帰るぞ」
「その人、今はそっとしてやってくれないかな」
いつの間にか、ユアファが哀しげな微笑を浮かべて立っていた。男は驚いてユアファを見た。
「ここはあんたの家か」
「ええ」
そして、男はウィンレオを見た。憔悴しきっている。ユアファはそっと口を挟んだ。
「この人に何があったのか、あたしは知らない。ただ、大切な人を亡くしたって聞いた。あたしが思うに、亡霊王なんかやっちゃってる分には、この人こんなにヘタレ君じゃあないんでしょ?」
男は目を丸くした。

