幻影都市の亡霊

「……俺の……せいだ……」
「?」

 どっ、とウィンレオはその場に崩れ落ちた。

 だがしかし、ユアファはそれを見ても何も言わなかった。しばらく眺め、すぐに自分の手元に目を戻した。

 悔しかった。言い様もない苦しさと悔しさがウィンレオを蝕んで、どこかの闇に吸い込まれそうだった。頭を両腕で抱え込み、震える身体を押さえ込むことさえしなかった。恐ろしかった。自分は王としてあってはならないことをしてしまったのだと、沢山の闇がウィンレオを責める。

「亡霊王、かぁ……。凄いね、あんた。どうりでそんなに器が大きいわけだ。本当は人間であっても魔力を扱う立場なあたしは、あんたを敬わなきゃなんないんだろうけど、あたしには今のあんたが偉い王様にはちっとも見えないから、敬わないわよ」

 ウィンレオは今何を言われても答える気にはならなかった。もう、王であることすら辞めてしまいたかった。

 全ては、あの親友が支えてくれていたからこそ耐えてこられた。

 同時に、自分はどうして歪みを作ってしまったのかを考えた。自分は恵まれていたはずだ。ユークラフという優しい妻と子がいて、オーキッドという親友がいて、ヨミや沢山の頼れる仲間がいたはずだった。

 それなのに、どうして自分の心が世界を歪ませるほどにも歪んでいたのか、わからなかった。

 すると、ユアファがウィンレオの前に立った。

「ほうら、お食べなさい」

 ユアファがお椀を差し出した。中にはどろっとした得体の知れない液体が入っていた。どうやら先ほどお釜でぐつぐつ作っていたものらしい。