幻影都市の亡霊

「ウィンレオ……」
「すまない……ヨミ……皆に伝えてくれ……現界へ行く。しばらく……留守にすると……」
「ウィっ……」

 一瞬のうちに、その場からウィンレオの姿は掻き消えた。

「…………」

 もうすでに、ヨミには何が起こったのかわからなくなっていた。

〝ファザーが死んだ……?でも……死体はない……〟

 まだヨミには、そこに突っ立っているしかできなかった。呆然と、今しがた彼の目の前で起こったことがどういうことなのか、考えていた。そこに、

「ヨミ様」

 王直属の近衛兵隊が到着した。隊長のアルモ=キックエトは、何も起こっていないような静けさの中心で棒立ちしている王直属の部下へと声をかけた。

「なぁ……亡霊が死ぬって……どういうことなんだ……?」

 ざわっと、兵達がざわめいた。アルモは眉を顰めた。

「……どういう意味です……? ここに、陛下もいらっしゃったのでは……?」
「……来た……。だから、亡霊が死んだらどうなるのかって聞いてるんだっ!」

 ヨミが声を荒げた。アルモは釈然としないまま、

「ヨミ様は、人間から亡霊になったから……亡霊の死を見たことがない?」

 ヨミは肯いた。アルモは戸惑ったように、

「……人間は死んだら、肉体が残るけど、亡霊は肉体なんかないから、死ぬということは器が壊れるということなんですが、器が壊れればそのまま霧散します」

 ヨミは、そのまま耐え切れずにへたり込んだ。涙が、流れ出た。

「ヨミ様」

 アルモが驚いて体を支える。

「……ファザーが死んだ……」

 全員が息を飲む音が聞こえた。代表してアルモが、ヨミに尋ねた。