幻影都市の亡霊

「嘘だ……逝くな、オーク」
「……これを、預けるぞ」

 言って、オーキッドは自分の首飾りをウィンレオにかけた。そして腕輪をヨミに手渡した。そして笑って、

「このまま……私が持っていれば……共に消えてしまうから……」
「やめろ……俺が悪かったんだ……すまないっ……消えないでくれ……っ」

 ウィンレオは泣いていた。それと同時に、ヨミは世界が泣いているのを感じた。

「泣かないでくれ……ウィンレオ……大丈夫。……大丈夫だから……」
「ファザー……っ」

 オーキッドはそっとヨミに笑いかけ、

「ヨミ……ウィンレオを頼んだ……」

 オーキッドはそっと力の入らない両腕をウィンレオの首に回した。

「私はずっと……側にいる……幻界を……頼んだよ」

 ウィンレオが息を飲んだ。幻界がぞわぞわと暴れだした。

「オークっ!」
「ファザーっ!」

 ぱきんっ……ぱんっ

 ガラスの砕けたような音が響き、オーキッドの身体が霧散した。ヨミが目を見開いた。初めて目の前で、亡霊が死んだのだ。

「……どう……して……?」
「……亡霊は、形の無いものだから……器から解放されれば、霧散するんだ……」

 ウィンレオはオーキッドの首飾りを握り締めていた。

「……オーク……」

 ヨミから、ウィンレオの顔を窺うことはできなかった。

 だが、どれだけの悲しみが支配しているかすぐにわかった。ウィンレオは間接的にオーキットを死なせてしまったのだ。まだ世界が震えている。