幻影都市の亡霊

「まぁ、上手くやっていくことだ。王ともなると、夫婦関係に愛などなくても不思議でない。彼女は王の妻という地位を与えてちやほやさせていれば満足だろう」

 ――その数日後に、ウィンレオは婚約を申し入れ、そのまた数ヵ月後、盛大な結婚式が開かれることとなった。

 その結婚式にはもちろんオーキッドとヨミもいた。そこで初めて、二人はソフラスを見たわけなのだが、ヨミは顔には出さなかったが、オーキッドなどはあからさまに顔を歪めて、小声でヨミに言ったものだ。

「あいつの言う通り、あまりいい気のしない人だ。傲慢さがにじみ出てる」

 ヨミの感想も同じだった。

「仕方のないこととはいえ、あれでは気の休まる時などないだろう。誰かあいつが本当に安らげそうな娘を紹介しなくては」

 王ともなれば、何人妻がいてもおかしくない。おかしなことで青い亡霊は燃えていた。

 ――ある夜中のことだった。ヨミは身体の中にうずくものを感じて寝付けなかった。こんなことは日常茶飯事だった。いつもベランダから空を眺めて、ぼーっと過ごすのだ。

「明日の訓練に支障が出るぞ」
「ファザー」

 振り向けば優しく微笑む美しい亡霊がいた。オーキッドはそっとヨミの隣に並んだ。

「どこぞの王様も気が散ると空を眺めている。人間は空が好きなのかな」
「飽きないじゃないですか」

 確かに、とオーキッドが笑う。そして、穏やかな表情になり、

「ヨミ、お前も導者になれ」
「え?」
「ウィンレオの次の王を、お前が導け」

 ヨミは首を横に振った。そしてうつむいて、

「俺は、大切な人すら導いてやれなかった……それなのに王なんか」
「それは私も同じだよ、ヨミ」

 ヨミは驚いてオーキッドを見た。オーキッドは哀しそうに空を眺めていた。