王宮の庭だった。様々な形の雲が奇妙に渦まきながら流れてゆく。
「ほら、お前の力はそんなものじゃないだろう? ほらっ」
長い空色の髪をたなびかせて、青い亡霊が黒い亡霊をしごいていた。黒い亡霊もしっかりと後に続く。それに嬉しそうに笑んで、
「いい子だ」
ふと、青い亡霊は手を止めて、ヨミの後方を見た。つられてヨミもそちらを見た。
「暗い顔をしているなぁ、ウィンレオ?」
「王様……」
そこにウィンレオが佇んでいた。青い亡霊に声をかけられ、そちらへと歩み寄った。
「オーク、人聞きが悪い。だがちょっと、疲れているのかもしれないな……」
オークと呼ばれた青い亡霊、名はオーキッド=ファザール=イプシロン。誰であろうウィンレオを王へと導いた亡霊だった。この二人の間には強い絆があった。
この時点で唯一クロリス王をウィンレオと呼ぶ人物だった。ウィンレオはヨミを見た。ヨミはきょとんと切れ長の瞳を瞬かせる。そんなヨミへとウィンレオは笑みを向けた。ヨミはぎこちなく頭を下げた。
「いやいや、頭を下げる必要なんかないない。ここに来てるのは王クロリスじゃなくて、俺ウィンレオだ。お前もウィンレオと呼べよ」
ヨミは度肝を抜かれて、
「い、いや……王様は王様で……」
ヨミは貴族式に礼をした。ウィンレオは優しく微笑むと、
「もう、貴族のヨミはいない」
「いえ……お……私は……」
「私も禁止だ。ここに来たからにはお前はただのヨミになれ。風来坊で無作法な男になってしまえ、ヨミ。堅苦しい言葉で着飾ったお前を棄てろ。俺は今堅苦しい王だ。結構な重荷だ。お前はそんなものを背負わなくて良い」

