幻影都市の亡霊

「一緒に来い、俺の直属の部下の部下にしてやろう。この光栄をありがたく思え」
「……」

 ヨミは半ばぽかんとしながら王様を見上げた。そして同時に、

〝これが王様なんていうのは、ギャグなんだろうな……〟

 そして、だんだんと思い悩む自分が馬鹿らしくなってきたのだ。それは、ヨミの中の狂気をツキミが持っていって、ヨミを軽くしたせいかもしれない。ヨミは疲れたように微笑んだ。すると、王様はむっと表情を固くして、

「笑うときは、こうだ」
「!」

 ぐにぅと、ヨミの頬を引っ張った。そのまま尋ねる。

「名前、なんだっけ?」
「ほみ……」
「ほみ?変わった名前だな」

 ヨミは、己の頬を戒める王様の手を取り除いて、

「ヨミです!」
「わかった。さ、本当に行くぞ。力の使い方から、ピンからキリまで俺達で教えてやる」

 再び差し出された右手を、ヨミは力の入らない右手で握り返した。そうやって二人はその場から消えていた。







 生暖かい風が土を巻き上げて、炎を揺らした。

「そうやって、亡霊に……?」

 ウェインが尋ねると、ヨミは小さく肯いた。

「ツキミが生まれたのはそのときだ。だから……」

 ヨミは顔を、ウェインの知らない闇夜に向けた。

「あれは、俺なんだ……。だから、お前の町を消したのは、俺……」

 ウェインはやっと、ヨミと初めて出会ったときの曖昧な言葉の意味を知った。