幻影都市の亡霊

「まぁまぁ」

 セレコスが、ウェインの肩をぽんぽんと叩いた。

「さて、俺達も帰るか。ヴィー、皆に伝えてきてくれ。俺はこのどうしようもない若造達の後始末を手伝うとするよ」
「了解、お頭。でも、残念、あたしも見届けたかったわ」

 ヴィアラはその優麗な姿態を翻し、酒場へと歩いて行った。その後に、シクラが続いて行った。それを見送り、セレコスはウェインとヨミを見た。

「おい、ヨミ、聞いてるのかっ?」
「聞い……てる」

 ヨミは、悲痛な声で言った。ウェインの気が殺がれた。今にも消えてしまいそうな、声だった。

「そうだよ……好きになった女一人導けなかったんだ……」

 ヨミの身体が小刻みに震えていた。ウェインは、事情がつかめなかった。

「……ツキミの、ことなのか?」
「違う」

 ヨミは、きっぱりと言った。

「ツキミは、俺だ」

 再び、ヨミはそう言った。

「?」
「長話になるだろうよ、ヨミ。向こうで話さないか?」

 セレコスがヨミに言う。ヨミはぴくりと身体を震わせると、泣きそうな顔で、ヨミはセレコスを見た。どこかセレコスは、優しげな、全てを包み込むような笑みを浮かべていた。すっとヨミの肩をさする。

「お前は覚えていないだろうが、俺ははっきりと覚えてる。あの白い亡霊が生まれたときの話――」
「なっ」

 ヨミが大きく目を見開いた。やはり、セレコスは笑みを浮かべている。

「薄情な奴だ――と言ってしまうのは簡単だろうが……こう言えばわかるか。願いを叶えてもらった奴の顔ぐらいは覚えておけよ」

 ヨミは呆けた顔でセレコスの顔を見上げていた。そして、その白濁した緑の瞳をひたと見た。そして大きく口を開いた。

「まさか……」

 へへっとセレコスは笑う。

「黒い覆面の……っ?」
「あんときは左目しかだしてなかったなぁ、そう言えば。その通り、俺がお前を亡霊にしてやったんだよ、ヨミ」