〝なっ……!〟

 頭が真っ白になるとは、このことだ。そして、一気に吸った空気を静かに吐き出す。

〝なっ……?〟

 少年は、眼を見開いて絶句していた。その光景に――。

「ま……町が……無い、だと……?」

 呆然と、少年は呟いた。言霊は風に乗って消えた。目の前の光景は到底信じられぬものだった。ぷっつりと、全くぷっつりと、全てが消えていた。少年の立っている場所、本来なら街道の終わりだ。町の入り口を告げるゲートがある。その、一歩過ぎた先から――何も無くなっている。森さえも、ぷっつりと途切れている。

「……は……?」

 少年は眩暈を感じた。この情景を、どう説明すればいいのか?どう信じればいいのか?

 ゲートを越えた一歩先、地面が一センチほど沈み込んでいる。そこから、町があった場所が円状に、それも巨大な円状に――。何も無くなっていた。赤土の地面が、ただただ広がっている。暗がりに、向こう側の森がはっきりと見える。

「……何の、冗談だ……?」

 少年は座り込んだ。地面をまじまじと見る。そこから、はっきりと何もかもが変わっていた。そこには町があったはずだ。そこには建物があったはずだ。そこには石畳の地面があったはずだ。今は、何も無い。ただ赤土の地面が、べったりと押し付けられたように、広々とあるだけだ。小さな雑草すらはえていない。

「何が……あった……?」

〝新しい兵器か? 超常現象か?それとも何か? 道を間違えたか? ここじゃないのか、俺の町はっ! どうなっている……?〟

 少年は気が狂いそうだった。目の前の光景が、全く理解できなかった。目の前で、こうだと言われていることなのに、全く理解できなかった。