幻影都市の亡霊

「ああ、説明をしてなかったな。こっちはアルモ=キックエト、そっちはアクエム=レーヴルド。どっちも王直属の部下の部下。すなわち俺の一つ、位が下。う~ん、で、なんでここにいんだ?」

 ヨミは二人に言う。するとセレコスが、

「なぁに言ってんだよ、俺達の動向を報告するために決まってるじゃないか。俺とあいつは親友同士だ。だが、あいつは王で、俺は異民族の頭だ。けじめはつけなきゃなんねぇ」

 セレコスは豪快に笑った。アクエムが小さく微笑んで、

「俺達は陛下が大好きです。慕っています。でもそれと同じくらい、このお頭も大好きですよ」

「なんだアクエム、可愛いこと言ってくれるじゃないかぁ、可愛いやつめ」

 セレコスは右手でぐわしとアクエムの頭を自分に引き寄せると、その頬に口づけした。アクエムがあからさまに嫌な顔をする。慌てて豪快なお頭から離れて、頬を手近の布でごしごしと拭く。その整った眉が盛大にしかめられ、橙の眼は見開かれている。その白い肌が赤く染まっていく。

「はっはっはっ、可愛い奴め。……しかし、宴もそうそう続けられないようだ」

 突如、セレコスの顔が引き締まった。彼の動作一つで、しんと酒場は静まり返った。

「……」

 ヨミの顔が鋭く引き締められるのに、ウェインは気づいた。

「もう……来やがったか……」

 ヨミが、駆け足で建物を出た。ウェインも、さっと後を追おうとする。しかしそれを引き止めたのはセレコスだった。

「お前に、何ができる?」
「……何もできない。だけどヨミは俺の為に戦うんだろ?」

 ウェインはそのまま、店の外を出た。そこには、薄暗くなり静まった通りで、黒い亡霊と白い亡霊が睨み合っていた。