幻影都市の亡霊

「スト……ロール……そうか、そういうことなのか?」
「ああ」

 ヨミは、セレコスの言わんとする意味を察し、肯いた。
 だがヨミは、セレコスと、宮の外ではゼロアスという偽名を使うウィンレオの関係を掴めずにいた。そんなヨミの様子に気づいて、セレコスは気を取り直して笑い、

「俺はゼロアスの親友だ。あいつの過去も全て知っている。俺はこんな身体だから、ユアファのことを頼まれたんだ」
「彼女のことを?」
「母さんのこと?」

 ヨミとウェインは声をそろえた。セレコスの気が緩む。そして、酒場の空気が緩んだ。

「お頭、この人の器、大きいよ。人間なの?」
「ああ、人間だ。触ってみろよ」

 シクラはそのことにこだわっていたようで、セレコスが言うと、セレコス越しにウェインの身体に触れてきた。

「……」

 ふにふにと腕に触れると、

「うん、人間だ。でもこんな、亡霊にもエキストにもいない」
「エキストってのは影の民のことだ」

 ヨミが言った。ウェインは小さく肯いた。

 シクラはまだウェインの身体を無表情で触っていた。ウェインにも彼女の手の感触が伝わってくる。人間の肉体とは、かすかに違う。何処が違うのかは言い切れない。だが、違うのだ。恐らく幻界と現界、どちらにも適応している身体なのだろう。

 ふと、シクラは手を止めた。ちょうどウェインの頬で。その真っ赤な澄んだ瞳と、薄い右紫左青の瞳がぱちりと合う。