幻影都市の亡霊

「そうか……ヨミ、見つけたのか」
「……あんた……まさかセレコス=ドワンクールかっ?」

 ヨミは三十代の男を驚いて見た。そして酒場を見回し、

「それじゃあこれは……レーテス・フォゲットの!」
「ああ、俺の軍だ」

 ウェインは、はっとして周りを見回す。一目見てわかる異民族の装束。

「これが……影の民?」
「まぁ、坊主、ここに座れや。ヨミも、アルモの隣にでも」

 ウェインは促がされるまま、男――セレコスの隣に座った。ヨミもアルモと呼ばれた青年の隣に座る。

 そこで、短い筒のような帽子をかぶった銀茶のお下げ髪の、ウェインと同世代ほどの少女がテーブルに身を乗り出して、どこか無表情で、

「あんた、本当に人間? 何でそんな器でっかいの?」

 ウェインは何も応えなかった。その隣にいたセレコスは、少女の頭をわしっと掴んで、

「こいつはシクラ=サミーだ」
「はぁ……」

 影の民には、身体があった。ヨミのように実体化しているわけではない。魂の形に見合う肉体があった。ウェインは居心地が悪かった。明らかに自分に向けられている視線。静まり返った酒場。異様と言えただろう。グラスの氷さえ、溶けていないように見えた。

「で、坊主、名前は?」
「ウェイン=ストロール」

 時が、止まった。

「お頭、どうしたの?」

 セレコスが、緊張したようにウェインを凝視している。セレコス一人の動揺が、空気を伝わるほど、セレコスの持つ力は大きかった。