幻影都市の亡霊

 この状況で、ユアファには術がなかったのだ。

「うぅっ……ウィンレオ……」

 期せずしてあの男の住まう場所にいる今、あの男への想いを抑える術など、持ち合わせていなかったのだ。







 人込みを抜けてきたウェインがやってきた。ヨミはウェインに財布を投げ渡す。

「おぅ、良くやった」

 ウェインは鞄に財布をしまいこんだ。

「おおっし、酒場行こうっ!」

 元気良く、ヨミは言った。ウェインはそれを横目で受け流し、

「なんでだ」

 短く言った。

「んで、フォゲティアへの行き方は?こっち着いてからだんまりじゃないか」
「う~ん……あの、な?」

 しどろもどろになるヨミ。ウェインは呆れ顔で、

「まさか、行き方を知らない、とか言わないよな」
「……ってわけじゃないんだが、同調が切られているっつーか……切られてたら俺にはどうしようもできないっつーか……」
「たああぁぁあぁっ……」

 深く息を吐くウェイン。そして、

「それで、なぁにが王を導くだ。人っ子一人導けないぜ、んなもん」

 ウェインはいい加減に人の視線が嫌になってくる。横を見れば喫茶店だったので、とりあえずそこに入った。

「……」
「いやっほぅ~い♪」

 歓声を上げるヨミ。そこは喫茶店のような外装の酒場だった。

「何も買わないからな!」

 ウェインがヨミに言う。
 酒場の外見は、他の建物に合わせて創金属と強ガラスとモニターに飾られていた。だからウェインはそこが喫茶店だと思った。
 しかし中に入った瞬間、酒の独特の匂いが鼻を突く――しかも中は、内側は木造だった。フローリングの床。それはほどよく年季が入り、黒味がかった茶色と化している。一言で言えば雰囲気のある店だった。