幻影都市の亡霊

「取って来ぉいっ」

 ごぅんっ!!

「うわぁぁぁぁっ」

 投げ飛ばされた直後に実体化を解いたヨミは風を切りながら、不自然な体勢で人間達の頭上をすっ飛んで行った。

「わわわ……」

 途中まで風に乗って飛んで、そこで体勢を取り直し、

「ちっ、あの婆どこだっ! ま、魔酒三百本っ!」

 ヨミは一瞬見かけた老婆を探す。そして、見つけた。人込みを外れた場所だった。

「おい婆さん、それ返せ」

 ヨミが頭上から声をかけ、老婆の横へ降りた。老婆はヨミを見とめて、

「おやおやあの小僧は亡霊に取り付かれておったか」

 老婆はにやりと笑い財布を差し出した。

「ふんっ」

 老婆からヨミは財布をふんだくった。

「そんじゃ」
「彼は王たる者だろう」

 ヨミは、老婆を振り返った。老婆は不敵な笑みを浮かべている。

「婆さん、視えるのか?」
「だてに年は取っていない。お前は導く者だな」
「ああ……」

 老婆は人込みの向こう――ウェインのいるだろう場所を見、

「かの者の器は視切れぬほど大きい。だが――」
「ああ、光り輝いていないだろう」

 ヨミは哀しげに言った。

「空っぽだな、あの器。彼はそこに一体何を入れるのか」
「……心が病んでるんだ。俺はあいつを解放してやりたいんだ。あいつ、絶対光り輝ける。世界の光になれる」

 ヨミの言葉には、確信している感があった。ウェインを信じている感じがした。いや、実際信じているのだろう。

「世界の光、か」

 老婆は微笑んで、

「なれるかな、あの小僧が。第一、お前に導けるかな」
「なぁ、婆さん、お前本当に人間か?」

 老婆は何も言わなかった。何も言わずに――人込みに消えていた。

「なんだ? あの婆さん……」