幻影都市の亡霊

「……?」

 歩き出そうとしたウェインは軽い違和感を覚え、立ち止まった。ヨミも立ち止まる。

「っ」

 ウェインは慌てて鞄を探った。

「どうした?」

 ヨミがウェインを覗き込んだ。ウェインはばんと鞄を叩きつけた。

「無い……」
「ん?」
「あんのクソ婆ぁ……」

 ウェインの顔が口端を上げて歪む。それだけで周囲を凍らせる威圧感を放つ。さながら悪魔の微笑だ。ヨミが困った顔をして、

「なぁ、お前のその顔マジ怖いって……」
「うるせぇっ! さっさとあの婆とっ捕まえてこいっ!」

 ウェインがヨミの腰元を掴む。ヨミの顔が凍りついた。

「な、なして?」
「財布っ!」
「……掏られたのか?」
「早く行けぇっ」

 ウェインの眼は、完全に据わっていた。

「ま、また稼げば良いじゃーんっ」
「一体何年かかると思ってやがるっ!あれには魔酒三百本は買える金が入ってたんだ!」
「何ッ」

 ヨミの表情が変わった。

「何取られてんだ自分っ!早く……んっ?」

 ウェインが掴んでいるのは、ヨミの腰元と襟元。

「んん?」

 ヨミの中で嫌な予感が膨張してゆく。

「すべこべ言ってねぇで……」
「おいおいおいおいっ!?」

 ウェインは体勢を低くして、発射体勢に入った。