幻影都市の亡霊

「程度を考えろ! この金食い虫っ」
「……んじゃあ二日で一本……」
「付き合いきれない」

 ウェインは実体化しているヨミを振り払って逃げた。だが、やはり亡霊は振り切れず。

「なぁウェイン、お前の夢ってなんなの?」

 ウェインは、立ち止まった。ヨミも追いついて立ち止まる。周りの人々が邪魔そうに避けていく。

「ほら、俺って王を導くって夢があるって言ってるじゃん。ウェインは?」
「……希望とか夢とかは、ガキんときに置いてきた」

 ウェインの顔に浮かぶ、哀しげな色。それはガスで曇った空に似ていて――。ウェインは気を取り直して歩き出す。ヨミは数瞬考えをめぐらせ、それはどこか哀しげな仕草で。

「んじゃあさ、お前って何にすがって生きてんの?」

 ウェインは無表情の仮面でヨミを見た。

「俺は、夢にすがって生きてる。夢のために生きてる。まぁ、夢が果されたら死ぬか? って聞かれたら、いやぁそりゃ答えはノーだけど、とにかく夢は俺の一部だ。お前は希望も夢もないって言うじゃないか。何が楽しくて生きてるんだ……? お前は何のために生きてる?」

 ヨミは、ウェインの空虚な生き方が気になった。それは、どうしても彼自身が望んだことではないはずだ。周りが彼を追い込んだはずだ。それなのに、どうしてウェインはそこから抜け出そうとしないのだろうか。

「……」

 ウェインには、答えられなかった。答えが、見つからなかった。どうして、自分が生きているか? そんなの、この世に生を受けたからだ。理由もなしに死ねない。だが、生きることにも、理由が要る……? そんなことを言われたら……。

〝母親の、あの人の優れた血を残すための、道具なのかもしれないな、俺は……〟

 ヨミには、およそウェインの考えていることが想像できた。哀しい思いを、悟ってしまった。そのとき、

 どんっ

「おや、ごめんよ」
「大丈夫ですか?」

 老婆がウェインとぶつかってしまった。ウェインはよろける老婆を立たせると、

「いや、坊やありがとうね、でわね」

 老婆がそのまま去っていった。