幻影都市の亡霊

〝俺は、十八年前に貴女と別れた。二度と会えぬと、辛い想いを胸に――。それは貴女が人間で、俺が亡霊だったからだ。現界と幻界、住む場所が違ったからだ……。それなのに、貴女はここにいるというのか? 俺が今まで必死に想いを心の奥に秘めてきたというのに……これでは、会いに来いと言っているようなものではないか……〟

 ウィンレオの顔は、悲痛に歪められいた。今にも泣き出しそうだった。

「ユアファ……俺は、ここにいるんだ……」

 わかっていた。ウィンレオにはわかっていた。
 会いに行ってしまえば、もう二度と別れられないことは。だがそれは、ユアファに人間であることを捨てさせることだ。もしくは自分が王であることを捨てることだ。それは、できない相談だ。だからこそ十八年前に彼女と別れたのだから。彼女には現界の生活がある。ウィンレオは、幻界の民を捨てることなどできないのだから。
 と、そこでウィンレオの脳裏にある可能性が浮かんだ。

「…………」

 ウィンレオは今の彼女を知らない。彼女はもしかしたら他の男と幸せになっているのかもしれない。家庭を持っているのかもしれない。だからと言ってウィンレオは彼女を責めるような真似はしない。彼女が幸せであればそれでもよかった。しかし、全てが不安だった。

 迎えに行く――約束だった――新しい王が、相応しい者がたってくれれば。

 だからせめて、会いたかった。

〝ヨミ、お願いだ。私の子供達も親の手がかからなくなった。新しい王さえ生まれれば、私は『私』から解放されるのだ。そうすれば――そうすれば、そうなったら『俺』は彼女のもとへと行けるんだ。ヨミ、お願いだ。相応しき者を、どうか導いてくれ。お願いだ――俺を導いてくれ……お前はあいつの息子なんだから――〟