「崩壊、ってどういうことだ!?」
「詳しいことはわからないが、両国同時に他民族の侵入を受けて、戦の続行どころか国としての機能が不可能なまで叩かれたらしい」

 他民族の侵入――その言葉にウェインはちっともぴんとこなかった。横でヨミが辺りを見回していて。ダグは疑わしげな顔で、

「その他民族ってのは……影の民らしいんだけどよぉ……」
「影の民!?」

 ウェインが顔を跳ね上げ、ヨミもはっとそちらを見た。影の民――それは即ち、フォゲティアの住人といわれている者達だ。ダグが首を横に振り、

「如何せん、時間がない。情報もない。すまん、そろそろ出港の時間だ。どうする、やめておくか?」

 ダグの言葉に時計を見ると、出港三十分前で、ウェインは首を横に振り、

「いや、行くよ。有難う」
「気をつけて」

 ウェインは荷物を持って、港へ歩き出した。

「影の民ってフォゲティアの住民だろ」

 ヨミがウェインの耳元で話し掛けた。ウェインは無言で頷いた。

「さっきから、胸騒ぎを感じる。レグオンとアイゾグレンドの戦が終わったっていうのはよほどのことだろう?」
「当たり前だ」

 そこで、乗り込み口に到着した。船はすでにそこにあって、ウェインはそのまま券を見せて、中に入った。客は少ない。