幻影都市の亡霊

〝幻界から……っ〟

「しかもそれもなぁ、結構な力の持ち主じゃあなきゃなぁ……あいつどうやったんだ? まぁ、あっちで頼めば使える奴、俺にはいるし。そーだっ! 俺が町を元に戻したら、王になってくれるか?」
「なるか……っ」

 そうは答えたものの、ウェインはどうにかして町を元に戻さなくてはならない。

「……俺は、王の器なんかじゃない……」

 そんなウェインに、ヨミは笑って言った。

「いいや、器さ。……ならなぁ、お前はとりあえず町を元に戻したいんだな?」

 ウェインは頷いた。

「それじゃあ、とりあえずさ、町を元に戻してから話をしよう」
「戻してくれるのか?」

 ウェインが身を乗り出した。

「条件がある」

 ヨミの漆黒の瞳がきらりと光る。ウェインが口をつぐんだ。

「一度でいい、幻界に来てくれ」
「…………」

 ウェインは、言葉を失った。

「……駄目か?」

 ウェインは唇を噛み締め、

「お前は、俺を亡霊にしたい。お前の力で、それができるんだろう……?俺には、それを防ぐことはできないじゃないか……」

 そう、ウェインには防ぎようが無いのだ。しかし、ヨミは首を横に振った。

「約束する。お前の許可無しにそんなことしない。俺は、お前にあそこを見てもらいたいんだよ。それにだな、俺はお前と行動して、絶対にお前の気を変えてみせる。だから、とにかくお前に見てもらいたいんだ、俺の尊敬する人が治める場所を」

 ウェインは、ヨミの真剣な目を見た。この亡霊には、ウェインを無理矢理にもどうにかする事ができるはずだ。それなのに、それをしない。どこか、ウェインを説得させることにこだわっているようだ――。いや、おそらくそれが導者としての勤めなのだろう。