幻影都市の亡霊






 スターコットは、目の前の女を、最大の愛を以って祝福した。

「もう、会えなくなるのは淋しいわ。だけど、良かったね、ユアファ」

 女は笑顔で肯いた。もう、泣かなかった。嬉しくて涙が出そうになる。だけど、泣かなかった。

「こことは違う風の吹く場所で、あたしは幸せに生きていく。現界の異臭も届かない、科学も肉体も無い場所で、あたしもこの肉体を捨てて生きていきます」

 スターコットは、わかっている、というふうに首を縦に振り、

「それが、あんたの幸せだよ。ウィンレオと、その子供達と」

 ちらりとラムとエンテルを見る。

「ようやく、たくさんの家族に囲まれて生きていけるね」

 ユアファは夏風のような笑みを浮かべた。

「はい、一度に子供が四人に増えました」

 ユアファはそっとラムの頭をなでた。

「それでは、ウィンレオが迎えに来たみたいです。それじゃあ……機会があったら遊びに来ます。それじゃあ、家の方を宜しくお願します。今までお世話になりました」
「それではおば様、ごきげんよう」
「さようなら」

 スターコットは、笑顔で家から出て行く三人を見送った。家を出た通りには、ウィンレオが待っていた。

「それではユアファ、準備はいいか?」

 ユアファは肯いた。

「次に幻界に行ったとき……」

 ウィンレオの言葉を、ユアファは遮った。

「いえ、違うわ。ウィンレオ、幻界に戻るとき、よ」

 ウィンレオはくすくす笑う。

「言い直そう。幻界に戻るとき、君の肉体は失われて、魂だけの存在になる。いいな?」

 ユアファは勢いよくウィンレオの鼻を人差し指でむぎゅと押そうとした。