幻影都市の亡霊

「ん、まぁ、じゃ、お前は亡霊になっても良いんだよな」
「ああ」
「ん、まぁ……不思議な感じがするけど、ま、どうにかなるとして」
「うわ、アバウト……」

 だが、ウェインもとっくに覚悟はしていたのだ。こんな日がきてしまうこと。母が肉体を捨てる決心をしていることを知ったとき、もうすでにウェインが現界にこだわる理由もなくなった。

〝確かに科学は恋しいけど……魔法のが楽しい〟

「現界が恋しくなったら、いつでも顔を出せばいい。亡霊ってのはわりと便利なんだ。あとのことはちゃんと教えてやる」

 ウェインは肯いた。そして、ヨミがぽんとウェインの頭に手を置いた。ほゎん、と穏やかな音が聞こえた。瞬間、自分の中で何かが崩壊する。

〝うっ……〟

 歪む。軋む。揺らぐ。その感覚は一瞬だった。ウェインが眼を開けば、今までとは違う感覚が待っていた。

「……なんだこりゃ」

 口にした声も、変わってないのに、口で発して、耳で聞いた感じではない。しきりに首をかしげるウェインに、シクラが不思議そうに、

「人間、どんな感じだ? 変か、亡霊は?」
「ん、まぁ……」

 だが、それもすぐに慣れそうだった。母を見る。母は笑っていた。ウェインも苦笑を返した。

「あぁあ、生まれてこのかた亡霊になるなんて、考えてなかったなぁ……」
「あー、そうだ。お前は王様だ。王の名前を考えなきゃなんないな」

 それを聞いたとき、ウェインは心配になった。自分も父のように迷うことになるのだろうか。ヨミは笑って、

「ウェインはウェイン、変わらない。でも王名ってのはやっぱないと困るからな」
「あたし、ウェインでいい」

 シクラが言う。そして、ウィンレオが困ったように、

「ま、俺みたいな複雑な事情も持ち合わせてないだろうから大丈夫だろー……はは」
「ウェイン、お父さんみたいにはならないのよー?」

 ユアファの言葉に、ウェインは笑った。