幻影都市の亡霊

「興味ある」

 ヴィアラは本当に嬉しそうにシクラの頭をなで、

「お頭、行かせてあげよう。この子初めて自分から……」

 孤児だったシクラは感情表現が苦手だった。自分の気持ちを言葉にすることが苦手だった。そんなシクラに、セレコスも笑って、

「ウェイン、良いかな、うちの娘を預けても」
「まぁ、構わないけど……」

 シクラが嬉しそうに笑った。セレコスとヴィアラが驚いて彼女を見た。しかしすぐに無表情に戻り、

「それじゃ」
「うん、ちゃんと帰ってきなさいよ」

 ヴィアラの言葉にシクラはきょとんとして、てくてくとヴィアラの袖を引っ張った。そしてこそりと、

「エキスト、王の嫁になれる?」
「…………」

 ヴィアラはそれこそ絶句した。

「ウェインの近くにいる。ウェイン、弱いからやられちゃう」

 シクラはどこまでも真剣である。その妖艶な瞳をぱちくりと優に十秒かけて瞬きし、笑った。

「あんた次第よ」
「そ。じゃ、また」

 セレコスとヴィアラとアルモ、そしてアクエムがエキストの集落へと戻っていこうとした。それをヨミが引き止め、

「待て、四人とも。ちょっと控えの間で待っててくれよ」
「なんかたくらんでるな?」

 セレコスにヨミはにこにこ笑って、

「後で呼ぶからそれまで待っててくれ」
「わかった」

 三人は控えの間へと行き、シクラはててっとヨミとウェインのもとへと歩み寄った。