幻影都市の亡霊

「私が悪いのだ。彼らを追い詰めたのは私だ……」

 エンテルは首を横に振った。

「僕は、父上を見て育ちました。父上は立派な方だった。母上や兄さんが父上に反発したのが悪かった。それを止められなかった僕も悪かった……」

 激しい罪悪の念をエンテルが一身に背負おうとしていた。

「誰も悪くない」

 ウェインが言った。

「誰も悪くない。ただ、皆自分のことを考えていただけだ。君のお母さんだって、君のお兄さんだって、君だって。ただ、やりすぎただけだ。思いつめただけだ」

 そっと、台座の上の玉を見て、

「そして勘違いしたんだ。幻界は王のものだと。幻界は自分のものだって気づかなかったんだ。ここに生きる全ての者のものだ。王はただそれを支えるだけ。王が自由自在に操れるものでもない。すれ違ったんだよ、ラクスという人は王になれば……自分の居場所ができると思ったんだ。だから、今自分がちゃんと居場所を持っていることを見失った。ソフラスという人は……怯えすぎていたんだ。父さんが自分を罰するんだって。だから、今自分が責められてなどはいないことに気づかなかった」

 ウェインはそっと玉をなでた。

「可哀相だった……ほんのちょっと時間が足りなかったんだ」

 ヨミがどこか嬉しそうにウェインの頭をなでた。

「ウェイン、お前はちゃんと王の器と心を持ってるじゃないか」
「…………」

 ウェインはウィンレオを見た。そしてうつむいた。

「……どうした」
「俺、王にはならない」

 その場が凍りついた。ヨミでさえ困惑の色でウェインを見下ろす。ウェインは決心したように言う。

「まだ、王にはなれない」
「まだ?」

 ウェインは肯いた。

「俺は亡霊になろうと思う。そして、今まで目を背けてきたことを、今まで見たこともないようなことを、いろいろな人達の暮らしを見たいと思う。まだ俺は父さんの足元にも、コロテスとは肩も並べていないんだ。だから、今俺が王になったとしても、何もできないまま終わってしまう気がする。だから、もっと自分を強くしたい。それまで……」

 ウェインはコロテスを見た。