幻影都市の亡霊

「母さんはっ?」
「大丈夫! 気を失ってるだけだ……」

 ウェインはほっとした。何が起こったのか、わかるような気がした。この自分の手の中にあるのは、幻界なのだ。

 王の器を持つ者がこれを取れば、世界は一度王の器に収まり、世界を形作る。が、長兄の器はそれに足りていない。だから、〝世界〟が長兄の器に入り込み、溢れ出たのだ。器が小さかったがために。一気に世界が不安定になった。肉体を持ちながらこちらにきている母は、世界の外に弾き飛ばされそうになったのだ。何処に出口があるのかわからないような場所へ――。

 そして、そこにソフラスは弾き飛ばされてしまった。ウィンレオはしっかりとユアファを抱え上げた。ウィンレオは、怒っていた。

「今の混乱で小さき器の民は耐え切れずに死んだ! 彼方の亜空間に、暗黒の果てに飛ばされた者もいよう!」

 ぱぁんっ

 だがしかし、悲しみにくれた瞳を、〝息子〟のいた場所へと向けた。

「愚か者……」

 ラクスの器は、力には耐えられなかった。
 ウェインは、玉を台座に戻すと必死に自分の気を送った。周りにいた者を圧倒するほどの大きな力だった。

「幻界を形作るのが王なら、形を元に戻すことだって、できるだろう?ここは……」

 ウェインは泣きそうに言った。

「ここは貴方が何より大切な母と別れてまで守ってきた場所でしょう!?壊れたままでいいはずがないっ」
「ウェイン……」

 その場にいた者が目を見張った。はっきりと見えた。ウェインの器が光り輝く器を放つのを。

「王だ……」

 ぽつりと、ヨミが呟いた。

「王たる器だ……」

 王輝玉が透明な薄い紫に染まってゆく。エンテルが、哀しそうにウェインを見ていた。ウェインがその瞳に気づいた。

「止めるのは、僕の役目だったはずなんだ……」
「お兄様」

 ラムが震えるエンテルを支えた。

「母上も兄さんも……僕が止めるべきだったのに……」

 エンテルが嗚咽を洩らす。ユアファをセレコスに預け、ウィンレオがエンテルの肩を叩いた。