幻影都市の亡霊

「玉の間に急いでくださいっ」
「何っ?」

 ウィンレオが驚愕し、だっと王座の間を駆け出るように扉に向かった。

「行こう!」

 ヨミが焦ったように皆に声をかけた。ラムは、

「玉の間ってなんですの……?」
「王輝玉のある場所だ。俺達も行こう」

 ウィンレオの後に皆が続くと、廊下の一部が不自然に開かれていた。

「なぜっ」

 皆が飛び込んでいった。そこは、クリスタルのような外壁が球状に広がった部屋で、中央にクリスタルの台座があり、そこに人の頭ほどの丸い、透明な水色の玉があった。

「ソフラス……っ!」

 ソフラスが結晶の刃をエンテルの首に突きつけ、アルモとアクエムを牽制していた。ソフラスは焦ったようにウィンレオを見て、

「わ、わたくしは侮辱されるのが大嫌いですのっ! あ、貴方がすべて承知の上で、わたくしに黙っていた。嘲笑っていたのですね! わたくしの嘘を!」
「…………」

 ウィンレオは何も言わなかった。ラクスは無表情に母親を見ていた。ソフラスはラクスに叫んだ。

「何をしておりますのっ! その玉をお取りなさい! そうすれば貴方は王! この男はただの亡霊よ! 貴方は悔しくないのですかっ?あのコロテスよりも、あの人間の子供よりも小さき器だと言われて!」

 セレコスが驚いたように、

「やめろっ、それに触れるな! そんなことをすれば……」

 ソフラスは冷たくセレコスを見て、

「貴方の大切なお友達は王でなくなるんですものね! さぁ、早く! ラクス、王になるのですっ!」

 ラクスはそっとそれに手を伸ばした。ウィンレオははっとして、

「触るなっ! お前達身を寄せていろっ! ラクスっ」

 ウィンレオが叫んだにも関わらず、ラクスは哀しそうに父を見た後、がっと台座から玉を奪った。