幻影都市の亡霊

「貴方は必要とされていたから、王になった」
「ああ」
「……俺は必要とされていますか?」

 皆がウェインを見た。ヨミが驚いたように、

「必要とされてるって!」

 そこに、コロテスが言った。

「新たな王がたつことを、俺達の母は切望して死んでいった」

 ウェインはコロテスを見た。

「それは君の両親が、幸せに暮らすことだ。今の王に皆が満足し、民が新たな王を望んでいなくとも、俺達には必要なんだ! 君の両親が、俺の父親と君の母親が、共に幸せに暮らすことは、母上が最期まで望んでいたことなんだっ!」
「…………」

 ウェインは、それでも答えは出せそうになかった。自分が王になる、そのことに実感も湧かなかった。するとヨミがウェインの頭に手を乗せ、

「俺はな、お前に王になってもらいたい。理由もちゃんとある。最初会ったときはやっぱりうじうじしてて、なんか頼りないし、こんな奴で大丈夫か、とも思った。だが、術にもたけてるし、話しててわかった。お前は芯の弱い奴なんかじゃない、とても強い奴だってことも。お前は、お前の周りの人達の話を聞いて、考えて、変わった。もう初めて会った時のウェイン=ストロールはいない。ここにいるのは王の器を持つウェイン=ストロールだ」
「…………」

 ウェインはまだ何も言わなかった。

〝……たとえ王になったとしても、俺は彼らみたいになれると思えないんだ……〟

 そう。ウェインは周りの者達の話を聞いた。だから変われた。だからこそ、自分に自信を持つことは簡単にはできなかった。周りの者達は偉大すぎた。コロテスにしても、自分の意思をはっきりと持っている。だが、それが自分にもできるとは、やはり思えなかったのだ。

「陛下っ!」

 アクエムの悲痛な声が王間に響いた。