幻影都市の亡霊

「私が必要とされていたからだ」

 ウィンレオは王として話していた。

「人であった私はごくごく普通の、二十歳になる前の青年だった。ただ魔術が上手いというだけの、普通の人間だったのだ。そこに突然、年が少し上ほどの美しい男が現れて、私に跪いた。私のことを王だと、そいつは言った。私は戸惑った。だが、私は幻界に必要とされていた。その時の亡霊王、まあセレコスの親父さんだが、偉大な王だったが、やはり年には勝てなくて、力は弱まっていたんだと。何故ここに王が必要なのか、それはこの世界に『形』がないからだ。王はここに形を与えるために大きな器――強い精神を持たなくてはならないらしい。そして私は亡霊王になった。私を導いた美しい亡霊は、オークは私のかけがえのない親友となった。だがな、彼は死んでしまった……」

 ウェインは肯いた。

「そして母さんと出会ったって聞いた」
「ああ。彼女はたくさんのことに疲れきっていた『俺』を癒してくれた」

 ウィンレオがユアファを見た。ユアファは息子を見ていた。

「……俺は母から貴方の話を聞いたことがありませんでした。ただ一つだけ、母さんが俺に貴方を語った言葉があります」

 ウェインとユアファの眼が合う。

「あんたの父親は強い人だった」

 ウィンレオはユアファの肩を抱き、

「とても、頻繁に話のできるものじゃなかった。言葉にしてしまえば身を引き裂かれてしまうような思いがした」
「そこまでして別れる決心ができたのはどうしてですか?」

 その話も、聞いた。だけど、本人の口から聞きたかった。ウィンレオを待ち続けていた母への想いを――。

「愚問だよ、私を待ってる人は大勢いた」
「では母さんは? 貴方が戻ったとき、母さんはどうして亡霊にならなかった? 亡霊にしてつれてこなかった?」

 ウィンレオはユアファを見て、

「見ての通り、ここはぎちぎちに押し込められた鉄の籠――。子供達にはのびのびさせてやったが、それでも彼らは迷ってしまった」

 哀しそうに首を横に振った。