幻影都市の亡霊

「なぁんだ、まだいたんだ。ヨミも懲りないわね」

 ツキミだ。しかしヨミは振り返らなかった。真っ直ぐ町に向かっている。

〝先に、会わせなくちゃなんないんだ〟

 ツキミは面白くなさそうに、亡霊魔をあおりだす。しかし、誰も相手にしなかった。ツキミは唇を噛み締めて、空中で地団駄を踏んだ。

「なんなのっ」

 そこに、ヨミからの使い魔が飛んできた。思い切り顔をしかめる。

「ヨミから……?」

 ツキミは使い魔を展開させた。

『話は後でだ。今は黙ってろ』

「…………」

 白い亡霊は怒った。

「それぐらい口でいえばいいでしょうがぁっ」

 六人を追いかける。亡霊魔の速度も上がってきた。セレコスはウェインを抱えながら跳躍し、左手をどんっと地面に叩きつけた。抱え上げられているウェインはたまったものではない。その手を伝わって、地面からにょきにょきと黒い触手が伸びた。セレコスは何事もなかったかのように走り出した。ウェインが後ろを顧みると、触手は近づく亡霊魔をびしばし叩いていた。

〝この人は……凄い術者じゃないんだろうか……〟

 後方でぱしんっぱきっと、器の弾ける音がする。

「町に入るよっ」

 ヴィアラが言うと、セレコスが、

「おい、シクラ!」
「んっ」

 嫌な予感がした。ウェインの頬に嫌な汗が伝う。

「受け取れ!」
「どえっ?」

 ぶんっ

 風を切るいい音がして、セレコスはウェインをぶん投げていた。

「どわぁぁぁつ」

 ヨミは目を丸くし、いや、何も言うまい。大きな貸しが返ってきた気がした。